6/5

青森から函館、首都圏は日光。関西は伊勢志摩だが最近は広島も。「小学校の修学旅行先といえば」をお題に先日、ゼンリンがツイッターで出身地別に投稿を募ったところ、1万5千件もの反響があった。見知らぬ土地を友と旅した記憶は、たしかに郷愁を誘う。

社内の何気ない雑談からの企画だったというが、担当者は投稿をみて「地域ごとの特色がこれほど多様とは」と驚いた。富山や石川は修学旅行がなく、県内合宿という例が多かった。名称が「移動教室」の地域もあった。伊勢みやげの赤福が事前申込制だったなどの体験談を綴る人も目立ち、思い入れの深さを感じたという。

この2年、旅は日常から遠のいた。近畿日本ツーリストでは昨年度、手配したうち3割の修学旅行が中止になった。実施はしても早朝出発の日帰りといった強行軍も多いと聞く。班決めのドキドキから、初めて接する風物の味わい、夜更けの打ち明け話まで、子供たちをひとまわり大きくする機会が損なわれたのは切ない。

山本志乃神奈川大教授の「団体旅行の文化史」によれば、明治に始まった修学旅行は戦火が強まった昭和18年半ばになっても一部で続き、終戦翌年には再開した。根づいた文化といっていい。青葉きらめく季節、やっと感染も減り始めた。密に気を配りつつ、一人でも多く、思い出が胸に染み入る旅に出られますように。