6/19 気づかない日本の魅力

都内でフォークソングなどに描かれることの多い街が高円寺だ。古アパートに若いミュージシャンがギターを肩に路地を歩く。「高円寺駅で降りることが誇りだった」。中島卓偉さんの歌「高円寺」の一節だ。吉田拓郎さん、竹原ピストルさんにも同名の曲がある。

音楽だけでなくさまざまな分野のクリエーターが多い。古着屋やカフェも増え銭湯も健在だ。商店街など街の人の目も温かい。そんな高円寺を東京観光財団が訪日観光の目玉の一つに推している。海外の旅行業界関係者を招くと「東京の素顔にふれられる」と好評で、さっそく高円寺体験を組み込んだ日本ツアーが登場した。

既存の観光名所を駆け回るのではなく、その土地に入り込み、そこに住む人たちと語り合い、暮らすように旅をする。そうした地域に根ざした旅はコミュニティベースドツーリズムと呼ばれる。米ニューヨークは市内の多種多様な民族文化を体験する旅を海外に売り込む。タイも政府がこの種の旅行企画を後押ししている。

初めての来訪客は首都や有名な観光都市に足を運ぶ。次に知りたいのはふだんの姿であり普通の人々だ。東京観光財団とともに高円寺ツアーを練ったじゃらんリサーチセンターの松本百加里研究員は、当たり前すぎてアピールしきれていない魅力が日本にはたくさんあると説く。観光立国のカギは私たちかもしれない。