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1974年版の「通信白書」に、技術革新による「在宅勤務への道」を説いた一説がある。いまや交通量は増大の一途、移動時間のロスも大きいと指摘して「積極的な通信による交通の代替」を唱えた。米国の「リモート・ワーク・センター」計画などにも触れている。

白書をまとめていたのは、その名も懐かしい郵政省だ。インターネットもスマホもない時代である。それでも、在宅勤務の可能性と意義は浮かび上がっていた。やがて、日本電信電話公社はINS(高度情報通信システム)の構想を打ち出す。自宅でラクラク勤務、我が家の情報革命といった言葉が世に飛び交った。

当時は夢みたいだったのが、いまではすっかり普通である。とはいえリアル勤務も捨てがたい、と思っていたら、NTTは主要7社の従業員の半数、約3万人を原則テレワークとし、出社は出張扱いで飛行機代も出すという。電電公社が掲げてみせた理想を、後身がみずから現実化する図だろう。社会への影響は大きい。

じつは本稿も、近所の中高生の声を聞きながら自宅で書いている。楽屋オチで恐縮だが、冒頭の「通信白書」は国立国会図書館のデジタルコレクションを探したものだ。イノベーションの進展は目覚ましく、みんなが集まる会社はどんどん遠くなる。さて、締め切りだ。帰りがけに一杯とはまいらず、台所でビールを飲む。