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ソーダ水の中を貨物船がとおる/小さなアワも恋のように消えていった。胸に響く詞に、洗練されたメロディー。アルバムに酔い、大がかりな仕掛けのライブに熱狂した記憶をお持ちの方も多いだろう。ユーミンこと松任谷由美さんが近くデビュー50年を迎える。

1970年代前半といえば、「女のみち」や「瀬戸の花嫁」がテレビから流れていた時代。そんな中、クラシックや洋楽の影響を受けたユーミンの曲の斬新なコード進行は、四畳半フォークにも飽きたらない若者の心を揺さぶった。女性の細やかな心模様を刻む言葉と相まって、「恋愛の教祖」なんて称号も贈られている。

「中央フリーウェイ」「恋人はサンタクロース」に加え、男女雇用機会均等法が成立した85年には「メトロポリスの片隅で」で失恋から立ち直り働く女性を歌った。時代から2歩も3歩も先んじ、バブル期にはドライブの定番音楽ともなっている。一方で、冷戦を背景とした「時のないホテル」など作風の幅広さも見せた。

東日本大震災の際には「春よ、来い」が復興を後押ししている。激動の半世紀、人々の揺れる心情に寄り添った。まさに「国民的」存在だったと思える。「私の名が消えても、歌だけが詠み人知らずで残るのが理想」。当人はこう語ったと聞く。混迷が長引きそうな将来にわたって、あちこちで口ずさまれていくだろう。