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東京五輪の公式記録映画を見に行った。新型コロナのほか人種差別やジェンダーといったテーマを選手の姿に静かに重ねる描写が印象的だったが、同時に驚いたのは観客の少なさだ。平日の上映回とはいえ、座席についた人を数えてみると8人だった。

封切りから3日間の動員は1万2千人、ざっと1劇場1日あたりで20人という。ネットでは「映画も無観客」と皮肉る声が聞かれる。もちろんエンタメ超大作ではないし、作品の良し悪しと客足は直結しない。ただ、公式映画に人が集まらない光景は、終わったあの大会の「後始末」への無関心も映しているように感じた。

大会組織委員会は最終的な経費が1兆4238億円、公費負担は7834億円だったと発表した。いずれも当初想定のほぼ倍だ。延期やコロナ対策が響いたとしても、あれだけ「コンパクト」と連呼したのに何千億も余計にかかったことになる。使ってしまった金は知らない、では通るまい。より厳しい検証がいるだろう。

国立競技場などの本格活用策もこれからだ。「祭のあとにはうつろな疲労と共にゴミくずはつきものである」。1964年の前回東京五輪で、遠藤周作は閉幕当日の新聞にこう書き、新設された建物の先行きを不安視した。さて、映画はきょうが後編の公開日。銀幕に見入るかはさておき、大会が残した課題は直視したい。