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「結婚しようよ 僕の髪はもうすぐ肩まで届くよ」。学生運動が冷めた後、等身大の日常を繊細にすくい取った吉田拓郎さん。エレキギターにサーフィンと、大衆の憧れを次々体現した加山雄三さん。時代と相照らしつつ、芸能シーンを引っ張ってきたふたりだろう。

そんなベテランが近く、相次いで一線を退くという。加山さんによれば「歌えなくなってからではなく、歌えるうちにやめたい」。吉田さんは76歳、加山さんは85歳だ。まだまだ現役のパフォーマンスをと期待していたファンには残念な知らせだが、出口を見定め、みずから「引き際」を決断した姿はすかすがしくも映る。

昭和から並走してきた世代にも、人生の引き際は抜き差しならない問題だ。団塊世代は今年いよいよ後期高齢者層に足を踏み入れ始めた。未体験のゾーンへと急加速する高齢化で、医療や介護は十分に行きわたるのか。後に続く現役組も、どこまで働き、いつからどれだけ年金を受け取るのか。社会保障への不安は根深い。

人生100年時代、働き続ける人、退く人、一人ひとりが自分なりの引き際を選びたい。酷暑の選挙戦となった参院選で、そのあたりも熱い議論があったらいい。「どれだけ歩いたか考えるよりも しるべ無き明日に向かって進みたい」。吉田さんの「元気です」の一節だ。しるべのある明日を示すのは政治の役割だろう。

 

吉田拓郎さん、加山雄三さんが相次いで引退を表明した。加山さんは「歌えなくなってからではなく、歌えるうちにやめたい」と話した。パフォーマンスを期待していたファンには残念な知らせだが、みずから「引き際」を決断した姿はすかすがしくも映る。人生100年時代、働き続ける人も、退く人も自分なりの引き際を選びたい。そのためには高齢化が進むなかで、社会保障はどうなるのか、政府が示す必要がある。酷暑の参院選で大いに議論があったらいい。