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貧しさに負けた/いや世間に負けた/この街も追われた…。子どものころ深く意味も考えずに、男女のかけ合いをまねて歌った方も多かろう。絶望ソング「昭和枯れすすき」である。1974年に始まったドラマ「時間ですよ・昭和元年」の挿入歌になり大ヒットした。

売れずにもう少しで廃盤になるところを演出家の久世光彦さんが発掘した。馴染みの麻雀荘で有線放送から奇妙な歌が聞こえてきた。艶歌なのに男女がハモってる。とにかく暗い。希望の一欠片もない。「枯れすすき」との出会いを自著「ダニー・ボーイ」で明かしている。74年といえば日本は狂乱物価のただ中にあった。

この年、戦後初めて経済成長率がマイナスになり、高度成長は終わりをつげた。消費者物価も20%超上がった。社会を不安が覆っていたのだろう。恐怖の大王が降りてきて人類が滅びる「ノストラダムスの大予言」がベストセラーになる。念力でスプーンを曲げる「超能力者」がお茶の間を賑わしオカルトブームが起きた。

そして今、ほぼ30年ぶりにたくさんのモノの値段が上がっている。秋以降、さらなる値上げの波が来るそうだ。思えばこの2年半、ウイルスの恐怖におびえ、終わりの見えない戦争も続く。核の使用はありえない、ではなくなった。物価高のニュースに触れるたび、48年前の絶望ソングが頭の中をリフレインする。

 

約30年ぶりにたくさんのモノの値段が上がっている。これから秋にかけて、さらなる値上げの波が来るそうだ。かつて日本が狂乱物価のただ中にいた1974年。「昭和枯れすすき」という絶望ソングが流行し、ノストラダムスの大予言や超能力などオカルトブームが起きた。社会が不安に覆われていたのだろう。物価高のニュースに触れるたび、48年前の絶望ソングが頭の中をリフレインする。