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手塚治虫さんの漫画「火の鳥・復活編」にロビタという生活支援ロボットが登場する。家事から遊び、子守まで皆が頼り切るが、うち1体が無実の罪で処分される。実は意識がつながっていたロビタらは一斉に職務を放棄し、人々は泣き叫ぶ。「お願い、もどってきて」。

ネットでつながる機器が人に離反するSF作品は多い。小松左京さんの「お茶漬けの味」は電子脳で動く自動工場が生活必需品の供給をやめる。米映画「ターミネーター」は機械と人類の戦争を描く。いずれも私たちのひそかな不安を突き人気を得た。ダークな空想世界を少しだけ体感させられたのがKDDIの通信障害だ。

個人の通話、宅配便の連絡、バスの運行、高齢者の見守り、電子チケット。ネットやスマホがいかに暮らしに入り込んでいるかを実感させられた人も多かろう。きのう社長が会見で、発端は中継設備の交換で「何らかの障害」が発生したためと語った。原因がはっきりしないまま修復に励む技術者らの苦労がしのばれる。

SNSには利用者のさまざまな声が上がった。怒りや困惑にまじり、対応する社員や店員をねぎらう言葉も目立つ。「スマホ無しで生活し、自分がいかにスマホばかり見ていたかを自覚した」と省みる人も。辛抱強く前向きな消費者の姿に心が和む。企業がそんな優しさに甘えてはいけないのはもちろんだが。

 

KDDIの通信障害にはかつてのSF作品で描かれたようなダークな空想世界を想像させられた。機械が人に離反し、生活が成り立たなくなる。個人の通話、宅配便の連絡、バスの運行、高齢者の見守り、電子チケット。通信障害で私たちの暮らしにネットやスマホがいかに溶けこんでいるかを実感させられた。SNSには対応する社員や店員をねぎらう声やスマホにいかに依存していたか、と自省する声もあった。物語と違い、辛抱強く前向きな消費者の姿に心が和んだ。