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6月に開館したノルウェー国立美術館で館長のカリン・ヒンズボさんに会う機会があった。まだ40代の女性美術史家。国を代表する施設のトップとしての抱負を聞くと、力強く答えてくれた。「これまで美術館に来たことのないすべての人を迎えるために全力を尽くす」

過去1年間に美術館や博物館に行ったノルウェー人は人口のおよそ4割。中でも若者世代のミュージアム離れが著しい。近年の調査に危機感をもったのだろう。初心者や子供がアートに親しめるカードや玩具を各所のベンチに配置。ラウンジやカフェを充実させて、お絵かき用のデジタル機器も用意した。閉館は夜9時だ。

来館者の物理的、心理的な壁を取り除き、足を運びやすくする。若者、障害を持つ人、低所得層、移民…。より多くの利用者のために各国で公共の文化施設が知恵をしぼる。ベビーカー置き場をいちばん目立つところに配置した美術館、貧しい家庭の子が気がねなく本を借りられるよう、本の延滞料をなくした図書館もある。

この場で私たちは歓迎されている。来館者にそう感じてもらうことが重要、というヒンズボさんの言葉にはっとした。投票率の低迷に直面する日本の政治へのヒントがそこにないか。これまで選挙に行ったことがないすべての人を迎えるために何だってする。そのくらいの覚悟と工夫を政治のリーダーには問いたいのだが。

 

投票率の低迷に直面する日本の政治。それを打開するヒントがノルウェー国立美術館にありそうだ。ノルウェーでは若者のミュージアム離れが著しい。初心者や子供がアートに親しめるようカードや玩具を各所のベンチに配置している。カフェやラウンジを充実させ、お絵かき用のデジタル機器も用意した。この場で私たちは歓迎されている、来館者にそう感じてもらうことが重要、と館長のヒンズボさんは語る。日本でも選挙に行ったことのない人のための工夫がほしい。