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小説家の開高健はルポの名手でもあった。ある夏、各地でレジャーの現場を訪ね歩き、3ヶ月にわたって週刊誌に見聞記を連載した。後に「日本人の遊び場」として本にまとめている。ボウリング場や避暑地、遊園地などと並べて取り上げたのが神奈川県の湘南海外だ。

冒頭に「湘南海岸は黄金海岸だ」とある。東京や横浜から大勢集まり、高揚した気分で財布の紐を緩めるが時に羽目を外す。開高は汗だくで見回りをする警官に話を聞く。駅を出るまではおとなしい青年たちも、海を見るとわあっとはじける。「フライパンで豆がはぜているみたい」という警官の言葉に実感がこもる。

7月も下旬に入り、家族客らで水辺がにぎわう季節を迎えた。3年ぶりの海開きになったところも多い。各地の海水浴場の悩みが監視や救助にあたるライフセーバーの不足だという。コロナ禍で主要な担い手だった大学生サークルが活動を休止したり、資格取得ができなかったりしたのも原因だそうだ。病の爪痕は大きい。

「私たちはなにかに追われるように、血まなこで遊んでいる」と開高が記して半世紀余り。海、スポーツ、野外公演と、この夏こそはじけるべく張り切っていた人も多かろう。しかし空白は受け入れ側にもあった。新たな感染の波にも警戒がいる。あくまで自制の構えを忘れずに、しかし心身はしっかり解き放ちたい。

 

7月も下旬に入り、家族客らで海辺がにぎわう季節になった。3年ぶりの海開きとなる海水浴場も多いが、悩みはライフセーバーの不足だという。コロナ禍で主要な担い手である大学生サークルが活動休止になったり、資格取得ができなかったりしたのも原因だそうだ。病の爪痕は深い。この夏こそはじけるべく、張り切っていた人も多かろう。しかし空白は受け入れ側にもあった。新たな感染の波にも警戒がいる。あくまで自制の構えを忘れずに、しかし心身をしっかり解き放ちたい。