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「普通においしいです」。食事の席でこんな感想を耳にしたら、「普通とは何だ」と腹を立ててはいけない。発言の主が若い人なら、ほぼ最上級に近い褒め言葉だ。普通より特別を追い求めた世代と、普通が新鮮で大切と感じる世代。育った時代が言葉の意味を変える。「こういうのでいいんだよ」も先の「普通」に近い。この1行を添え、自分の好きなものをネット投稿する人たちがいる。具の少ないラーメン。ありふれた風景。もとは漫画「孤独のグルメ」で、昔ながらの定食を前にした主人公の心のつぶやきだ。大人の男性が1人で食事をするだけの地味な作品が近年、支持を広げる。ありきたりで驚きに乏しくとも、落ち着いた暮らしがますます貴重に感じられてくる。明日でウクライナ侵攻から半年がたつ。戦が長引き、穏やかな暮らしが失われる。普通の大切さに、戦争をしかけた指導者が思い至るまでどれだけの時間がかかるのか。（381文字）