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戦時中、時局にふさわしくないとして落語の53演目が上演自粛になった。でも軍人がお座敷に噺家を呼び、こっそり演じさせたこともあったという。外面ありきで内実は骨抜き。戦前の体制の一断面だろう。似たような体験談を哲学者の武田清子さんからも聞いたのを思い出した。開戦時に米国にいた武田さんらを乗せた帰国船で、出発時には長髪だった若手将校は、日本が近くなると突然丸刈りになった。お得意の英語もパタリとやめた。でもカタカナ語がつい口に出てしまう。そのたびに慌てふためく姿が滑稽だった、と。きょうは来年度予算の概算要求の締め切り日だ。防衛力の強化、要人警護の見直し、物価高対策。山積みの課題に対応するにも、予算額という外面ではなく、政策の実効性こそが問われよう。(324文字)