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軍縮を進め、東西冷戦終結に尽力したゴルバチョフソ連大統領が旅立った。彼は権謀術数渦巻くクレムリンの主というより、理想を語る改革の旗手のようにみえた。91年、ソ連が崩壊し、権力の座を降りた。失業者は膨れ上がり、インフレの波が押し寄せた。ノーベル平和賞は、ソ連を崩壊させたご褒美か、と自国で批判された。ロシア文学者、亀山郁夫さんの著書「ゴルバチョフに会いに行く」に、ギリシャ神話を引いた人物評がある。「みずからの肝を鷲についばまれながら、未曾有の袋小路に陥った世界にあってなお理想を語ることの正しさを主張し続けるプロメテウスである」。彼の仕事は必ず再評価されるはずだ、という願いだろう。(293文字)