10/21 仲本工事さん

あしたから改心し、勉強を頑張るつもりだ。つきましてはトンボ鉛筆を買ってほしい。1970年代に小学生だった昭和の子なら、親にこんな虚偽の陳情をした記憶をお持ちだろうか。当時、人気絶頂だった「ザ・ドリフターズ」の各メンバーの人形が景品でもらえたのだ。

その名も「首チョンパ」。人形の胴体の部分を押すと、空気圧で首が勢いよく飛んでいく。まことに教育上よろしくない販促品であった。が、子どもの世界では大ブームに。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で、「首チョンパ」というセリフが登場したそうだ。あの高明な脚本家も、親におねだりした同好の士なのか。

ドリフのメンバーが、また一人旅立った。仲本工事さん(81)。運動神経は抜群だった。寸劇でのキレキレの身体の躍動は学童の憧れの的。個性派揃いのメンバーの中では、控えめで気のいい兄貴のように見えた。そこがまた魅力で黒メガネの仲本さんの人形は人気だった。不用品売買アプリを開くと売り切れである。

周囲を引き立てる温顔の喜劇人だった。でも66年に来日した「ザ・ビートルズ」の公演の前座では、舞台中央でギターを抱え、「ノッポのサリー」をシャウト。格好いい。やる時は、やるのだ。職場でも、こんな人が慕われる。体操コントの名場面を回想し、酒場で静かに献杯したい。そんな昭和の子も定年間近だ。