10/26 マスク着用の空気

先日、ラジオで聞いたときは思わずふき出した。観客が声を出してもいい条件をライブハウスが決めたという。「1曲の長さの25%まで」「声量は通常の会話を上回らない」。もちろんマスクはした上で。誰が、どうやって時間や音量を測り、違反を見つけるのだろう。

早速SNSには茶化す投稿が飛び交った。皆で連携して少しずつ歌えばフルコーラスいける、サビだけならOK、等々。月に1度はライブに行く連れ合いは息巻いて怒っている。この1年、声援やステージとの掛け合いも我慢してきた。本来、歌を口ずさむのは生理的反応であって規制などまるで全体主義

これは少々極端な意見だが、確かにコロナ禍のルールはしばしば奇妙な光景を作り出した。「学校給食の黙食」「静かなマスク会食」そして「炎天下のマスク」。「第7波」が収まり、やっと日常が戻るかと思いきや、この冬はインフルエンザとの同時流行に用心せよという。マスクを堂々と外せる雰囲気にはなりそうもない。

山本七平は名著『「空気」の研究』(1977年)で、日本社会を支配する空気を壊すには「水を差す」行為が大切であると説いた。水とは「通常性」即ち「それはおかしい」といえるような常識のようなものだそうだ。何かを滑稽と感じて笑う感覚も、その種のセンサーに違いない。研ぎ澄まして目を覚ましておきたいと思う。