11/5 北朝鮮と秋の空

11月に入って首都圏は好天に恵まれている。抜けるような青空が広がり、すがすがしい。夏の太平洋高気圧に代わり、今の季節は大陸育ちの移動性高気圧が主役だ。大気中の水分や塵が減って青が濃くなり、空がどこまでも続くように見える。天高く馬肥ゆる秋である。

「秋空につぶてのごとき一羽かな」(杉田久女)。透き通った青一色のかなたを鳥がいく。どこまでものどかな印象だ。だが飛んでいるのが鳥ではなく、何発ものミサイルや砲弾だとすると情景は一変する。おとといはサイレンが鳴って、いっとき新幹線が止まった。ヒヤリとして、頭上を仰ぎ見た方もいるのではないか。

9月末以降、北朝鮮は同じような挑発を繰り返している。先月には1発が列島上空を通過した。核実験の可能性も指摘される。周囲の振る舞いが気に入らないのであろう。自分の思い通りにならないからミサイルを撃つ。おもちゃを投げる駄々っ子と同じではないか。兵器を玩具のごとく扱う為政者には憤りしか感じない。

「天高く…」の由来は中国の故事で、秋になると騎馬民族の馬が大きく育ち、収穫を狙い襲ってくることを警戒する意味だったそうだ。歳月を経て、穏やかな気候と豊かな実りへの感謝に転じたのだろう。争いがない世ならばその方がふさわしい。かの国のトップも時には秋の空を眺めて深呼吸してはいかがか。