11/4 SDGsを笑いで伝える

「昔々、おじいさんとおじいさんが一緒に暮らしていました」。「おばあさんじゃなくて?」。漫才はそう始まった。物語は桃太郎のパロディーで、主人公は武器ではなく六法全書と契約書で悪と戦う。先ごろ横浜市立大学が開いた「SDGs漫才」発表会の優勝作だ。

貧困解消やジェンダー平等など、国連がうたう持続可能な開発目標(SDGs)を笑いで伝える。この難しい課題にゼミ教育の一環として学生たちが取り組んだ。精神障害者らの団体のメンバーや地元の企業人とチームを組み、時間をかけてアイデアを練り上げる。プロのお笑い芸人から漫才とは何かの指導も受けた。

当初は「CSR(企業の社会的責任)を学ぶゼミと聞いて参加したのになぜ漫才か」と思う学生もいたが、結果は新鮮な作品が並んだ。自然保護とレジャーは両立するのか。物のリユースが推奨されるなら知的財産は。「笑いが社会課題に皆の目を向けさせる手段になると知った」。審査委員長を務めた経営者の感想だ。

指導教官の影山摩子弥教授は障害者雇用が職場全体の生産性を上げる理由を研究する。障害者への対応も笑いの創作もマニュアル化が難しい点で同じだ。多様な価値観にどんどんふれ、柔軟に受け止める術を身につけることがより良い人生や社会を作っていく。大人たちの思いはマニュアル万能の世に生きる若者に響いたか。