11/22 損切りの決断

「見切り千両、損切り万両」という相場の格言がある。株式投資は、買いよりも、売りの方が難しいようだ。さえない銘柄を見切る決断は、千両に値する。値下がりした銘柄に執着せずスパッと損切りする度量は、さらに10倍の価値がある。そんな教訓である。

人間には「損失回避バイアス」という習性があるそうだ。利得の喜びと、損失の悲しみを比較すると、後者が大きくまさる。含み損が生じた株について、「値を戻すはずだ」という根拠のない期待を抱きがちだ。結果的に傷口を広げてしまう。失敗に気づいたら、潔く損切りすべし。次の最善手を練る方が得策なのだ。

岸田文雄首相は政治資金の問題が相次ぎ浮上した寺田稔総務相を事実上、更迭した。1ヶ月足らずで3人の閣僚が辞任する異例の事態だ。内閣への信任は揺らぎ、山積する重要課題の国会審議は滞る。なぜ、もっと早く損切りできなかったのか。首相の決断力、言い換えれば、政治家としての相場観が問われているのだ。

人は追い込まれると決断を焦る。それは、たいてい間違っている。人気アイドル、平野紫耀さん主演のドラマ「クロサギ」にこんな意味のセリフがあった。失地回復に前のめりになると、落とし穴が待つ。閣僚の一連の不祥事の本質は何だったのか。首相は謙虚に総括し、信頼回復に向けた一手を探るべきかもしれない。