11/25 就活の意味

「就活って、トランプでいうダウトみたいなもんなんじゃねえの」。事件の記事を読み、朝井リョウさんの「何者」のセリフをふと思い出した。主人公いわく、面接で一を百と言うのは「バレなきゃオッケー」。友人と手分けして、ウェブテストを解く場面も描かれる。

22歳の女子大学生も同じような感覚だったのだろうか。採用時の適性検査で替え玉を依頼したとして警視庁に書類送検された。代行を請け負った男によれば、ほかにもたくさんの依頼者がいたようだ。運が悪くたまたま「ダウト」を宣言されてしまった、くらいの意識かもしれない。だが面接で長所を誇張するのとは次元が違う。

他人の手を借りる不正は以前から横行しているという。学力ではなく協力してくれる友人がいるかどうかを調べるテストだ、と小説にもあった。企業もうすうす気がついているのだろうか。だとしたらこの試験の意味は何なのか。「自分だけ真面目に取り組んでも損をするだけ」。記事が紹介する替え玉経験者の本音が寒々しい。

就活は思うにまかせぬことの連続だ。だが内定が人生のゴールではないはず。自分と向き合い愚直に成長を目指してこそ道は開けるのではないか。見ず知らずのおやじの声に説得力はないだろうから、サッカー日本代表森保一監督に一言借りる。W杯前の発言だ。「やるべきことの質を高めていけば力は自然と発揮できる」。