12/8 宅配の未来

空から異物が降る話は古くから世界各地に伝わる。江戸期の百科事典「和漢三才図会」には「怪雨」の項目がある。草や魚、獣毛などが降った記録が中国にあり、国内では元禄15年(1702年)に綿が降ったという。原因を「地上のものを風が運んだ」と説いている。

確かに竜巻などの気象現象で、巻き上げられたものが遠くまで舞うことはあり得る。2009年に石川県でオタマジャクシが大量に降った騒動を思い出す方もおられよう。あれは付近を飛んでいた鳥が吐き出したとの説が有力だそうだ。いずれにしても、大空からやってくる飛来物に、人は強い関心をかき立てられてきた。

近い将来、空経由で届くのは大量の段ボールかもしれない。改正航空法の施行で、有人地域でも目視外でドローンが飛べるようになった。空に宅配の道ができる。食品や薬が空から届けば、お年寄りは大助かりだ。一大ビジネスチャンスに企業も力が入る。スマホが生活を一変させたように、風景が切り替わる可能性がある。

もちろん不安を抱く人も多い。国は操縦免許や機体認証で事故防止を図るものの、本格運用はこれからだ。江戸の事典は、中国には金が降った話もあると紹介しつつ「さすがにそれはうそだろう」と一蹴している。ドローンが新たな金づるに見えても、安全より利益優先は許されない。心配を杞憂に終わらせる工夫がいる。