12/28 襟を正す

「襟を正す」は中国の史記に由来するそうだ。聖人を探す宋忠と賈誼(かぎ)が、長安に住む司馬季主という易者に会った。話を聞いてみると、発する言葉はことごとく道理にかなっている。見識の深さに驚き、感服したのだろう。2人は思わず「襟を正して正座した」とある。

▼あえて故事をひかずとも、誰もが感覚的にその意味を知っている。身だしなみを整え居住まいを正せば、自然に気持ちが引き締まる。入学式や採用面接、社運がかかった商談……。緊張を高める基本動作のようなものか。だが、そんなしぐさをすっかり忘れてしまった方も少なくないようだ。特に永田町や霞が関周辺では。

▼「政治とカネ」の不祥事や問題発言で大臣が辞任する異常事態が続く。先日は政治資金をごまかした議員がバッジを外した。退場するたびに「襟を正せ」の唱和が起きるが、当人らはどこ吹く風といった体だ。今年はさすがに終わりと思ったら、こんどは復興相と総務政務官だという。緊張感のなさにはあきれるしかない。

▼交代で身繕いをしているつもりなのか。あるいは国民が相手なら少々だらしない格好でも許される、と開き直っているのだろうか。有権者のまなざしはいよいよ冷ややかになっている。冷たい北風をしのごうとほおかむりを決め込むわけにもいくまい。そんなにも首元が緩んだままだと、そのうちひどい風邪をひきますよ。