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クロマグロの初競りは3604万円で、去年の2倍以上の値をつけた。サクランボの高級品種「佐藤錦」も過去最高値である。

・それでも肥料代、燃料代の高騰で漁師や農家の顔はさえない。

・何よりも消費者の懐が寂しい。

クロマグロ1匹3604万円。新春恒例の初競りのニュースを耳にすると、たとえ口にできなくても心が踊る。過去には億単位だった年もあるとはいえ、それでも去年の2倍を超えた。住宅を買える値段である。高根の花ならぬ高値の魚。いったい、どんな味なのか。

初物を食べると寿命が75日伸びるとされ、昔から珍重した。江戸っ子であれば「目には青葉山時鳥」の後に続く、初夏の初ガツオが代表格だ。サケ、マツタケ、ナスと並んで「初物四天王」と呼んだ。物価の高騰を恐れたのだろう。幕府は再三禁止令を出し、販売時期を規制した。

ことしはサクランボの高級品種「佐藤錦」も500グラム130万円と過去最高の値がついた。経済が上向く兆しと考えれば、明るい話題かもしれない。だが肥料代や燃料代の値上がりが著しく、漁師や農家の顔色はさえないという。頼みの訪日需要も中国からの渡航者に対する水際対策がきょうから強化され、先が見えない。

なにより消費者の懐が厳しい。これからもっと賃金は上がるのか。こんな川柳がある。「初鰹旦那は羽がもげてから」。「羽がもげる」は値が落ち着くという意味だ。きっと吝嗇家か節約志向なのだろう。この旦那に倣い、手が届くトロやサクランボを探すしかないか。長寿の縁起を担げないのは残念だけど。