1/7

・昔と比べて労組はすっかり弱まった。

・かたや実質賃金は昨年11月と比べて3.8%減。

・働き方が変わっても労組の役割は大きいはずだ。

 

石垣りんは銀行に勤めながら、たくさんの詩を書いた。当初の発表の舞台は労働組合の機関誌である。壁新聞の原爆忌の写真に添える詩を1時間で書き上げたこともあったという。全国から集まるそんな作品を、組合は毎年「銀行員の詩集」として出版していた。

「ほうぼうの職場で、多かれ少なかれこうした詩の出来事があったのでしょう」(「ユーモアの鎖国」)。1950年代、労働運動が盛り上がり、社会に影響力を発揮していた時代の話だ。賃上げや処遇改善を求め、反戦平和を訴え、文芸活動にも力を入れる。組合というものの存在感は抜群だった。

時は流れ、厚生労働省によると昨年6月時点の労働組合員数は1000万人を割り、推定組織率は過去最低の16.5%に落ち込んでいる。かたや、11月の毎月勤労統計調査では、実質賃金が前年同月比で3.8%減。物価上昇に賃金の伸びが追いついていない。けちん坊な経営者だけでなく、すっかり弱った労組にも責任はあろう。

デモだストだとは言わないが、働き方が変わっても組合の役割は大きいはずだ。やはり労働運動を体験した吉野弘の詩にこんな一節がある。「誰も苦しみをかくしている/誰も互いの苦しみに手を触れようとしない/誰も互いの苦しみに手を貸そうとしない/そうして 時に/苦しみが寄り合おうとする。」(「挨拶」)