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・前ローマ教皇ベネディクト16世と現教皇のフランシスコの対話を描いた映画「2人のローマ教皇

教皇コンクラーベと呼ばれる選挙で選ばれる。選出までに数日間かかることもある。

・それを考えれば5日間15回の投票を繰り返した米下院議長選も悪くはないのだろう。

 

史実とは少し違う。創作だと分かっている。それでも、あり得たかもしれないドラマの美しさが、もう一つの真実のように心に深く残る。映画「2人のローマ教皇」はそんな佳作である。昨年末に亡くなった前教皇ベネディクト16世と現教皇フランシスコの対話を描く。

かたやドイツ出身、趣味は古典音楽とピアノ演奏、大学で神学も教えていた教養人、保守派。かたやアルゼンチン出身、サッカーとタンゴを愛し、飾らない人柄、質素な生活で知られる改革派。出自も性格も異なる2人が、聖職者による性的暴行や資金洗浄問題でバチカンが揺れた時代、語り合っていたらという設定だ。

当然、意見は一致しない。思想信条がぶつかれば、神に仕える身とて攻撃的になる。だが、次第に2人は理解し合う。違いを乗り越えるのではなく、どちらかが変わるのでもなく、ただ互いを認めて受け入れる。そして固い友情で結ばれた。現実にはこういう機会はなかったらしいが、親友であり続けたことには変わりはない。

分断が叫ばれる今、映画を見返して多くを学んだ。教皇コンクラーベという投票で選ばれる。何世紀にも及ぶ権力争いを経て作られた選挙制度だ。選出までに数日間かかることもあり、5日間15回で決着した米下院議長選の普及も悪くないといえる。たどった過程が対立でなく、よりよい対話と理解の契機になったならば。