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・ブラジルの建築家オスカー・ニーマイヤーは首都ブラジリアの遷都に大きく関わった。

・彼が手がけた主要な建築群は「究極の自然」とたたえられる。

・その首都の中枢が襲撃された。右派の前大統領の支持者らの犯行とされる。

・首都建設中にはペレを擁するサッカーの代表チームがW杯で初優勝を成し遂げた。国のシンボルである2人は首都での蛮行、分断の時代をどう見るか。

 

リオデジャネイロの海岸線や丘、あるいは女性の体のカーブにもたとえられる。ブラジルの建築家オスカー・ニーマイヤーは、曲線や曲面の魔術を駆使した。小山のようにうねる屋根、宙に浮く円盤、らせんを描く巨大スロープ。どれもひと目でこの人のものと分かる。

首都ブラジリアの遷都にも大きくかかわった。中央部の荒野に人工都市が誕生するのは1960年。「50年の進化を5年で」を合言葉に3年あまりの驚異的なスピードで工事を終えた。連邦議会をはじめ手がけた主要な建築群は、洗練された有機的なデザインから、人間が知性をもって感知する「究極の自然」とたたえられる。

8日、その首都の中枢が襲撃された。飛行機型の敷地のコックピット部分に立つ議会、大統領府、最高裁判所である。右派の前大統領の支持者らの犯行とされる。議事堂の前面にかかるスロープを群集が埋め尽くす映像を目にした。建物の窓ガラスは割られ、壊れた消火栓で床は水浸し。家具や美術品が破壊されたという。

首都建設さなかの58年、のちの「王様」ペレを擁する代表チームがサッカーW杯で初優勝した。華麗なプレーに国が沸いた。当時ニーマイヤーは50代はじめ。年の差こそある2人だが、自由な発想と包容力で尊敬された。なしえたこと、創造したものにより国のシンボルになった彼らは首都での蛮行と分断の時代をどう見るか。