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・時代劇に出てくる「八州廻り」は江戸幕府が1805年に設けた関東取締出役のことだ。関東一円の治安が乱れたため設けられた。

・いまも関東の治安が心配だ。東京都狛江市の強盗殺人など、各地で相次ぐ強盗・窃盗事件。数人組の犯行で、指示役がいて闇サイトで実行犯を募っていた可能性がある。

・サイバー空間に潜む犯行グループを前に、現代の八州廻りの構えは十分なのか。今月に入って類似の強盗・窃盗事件は少なくとも7件起きていた。狛江市の事件は無念というほかない。

 

時代劇には「八州もの」が少なくない。「八州犯科帳」「八州廻り桑山十兵衛」「あばれ八州御用旅」。江戸幕府が1805年に設けた関東取締出役の活躍だ。武蔵、相模、上野、下野、上総、下総、安房常陸の8つの国をまたにかけたから八州廻りと呼ばれた。

この制度が生まれたのは、関東一円の治安がひどく乱れてきたからである。「関八州の村々で、無宿者の悪事を働くやつが多い。ことに渡盗賊といって、きのうはここにおるかと思うと、今日はかしこにいるという風で」と風俗史家の三田村鳶魚は「捕物の話」に書き留めた。しかしいまも関八州に渡盗賊はのさばっている。

東京都狛江市の住宅で高齢女性の遺体が見つかった強盗殺人など、各地で相次ぐ強盗・窃盗事件には深いつながりがあるようだ。いずれも数人組の犯行だが、指示役がいて、闇サイトで実行犯を集めていた可能性が浮かぶ。匿名性の高いアプリ「テレグラム」も使われていたらしい。じつに悪知恵にたけた連中である。

サイバー空間に潜み、広域に出没するグループを前に、現代の八州廻りの構えは十分か。東京都狛江市の事件では、千葉県警から情報を得た警視庁の警察官が現場に駆けつけたが間に合わず、女性は遺体で見つかった。類似の強盗・窃盗事件は今月に入って少なくとも7件起きていた。そのあげくの悲劇である。無念というほかない。