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・映画「ヒトラーのための虐殺会議」が公開中だ。残された議事録をもとに、ナチス・ドイツ高官がユダヤ人絶滅策を練る会議の様子を描く。

・独裁者の存在は、人の正常な判断力をここまでねじ曲げるのかと思うとクレムリンでも狂気の会議が連日開かれているのだろうか。

アウシュビッツ強制収容所ソ連が45年のきょう解放した。今度は侵略側に回ったロシアにドイツの戦車が対峙しようとしている。戦争は繰り返すまいというシンプルな覚悟すら貫けないのは一体なぜなのか。

 

賛成している人が多い手前、疑問があってもはっきりと言い出しづらい。自分の部署の負荷が増すかどうかばかり気にする人もいる。「トップの意向だから」という理由で、議論の深掘りが止まってしまう。忖度と空気が幅を利かせる日本企業の会議ではない。

ナチス・ドイツ高官らがユダヤ人絶滅策を練った1942年の会合の様子だ。公開中の映画「ヒトラーのための虐殺会議」が、残された議事録をもとに描いている。ユダヤ人を根絶する。ヒトラーのそんな妄想にどう応えるか。「コスト」「効率」「貢献度」。テーマは大量殺人なのに、ビジネスとみまがう用語が飛び交う。

独裁者の存在は、人の正常な判断力をここまでねじ曲げるのか。だとしたら、クレムリンでも狂気の会議が連日開かれているのだろうか。そう思わせるようなウクライナの惨状だ。市民への拷問、性暴力、子供の連れ去りなど耳をふさぎたくなるような戦争犯罪が伝わる。侵攻開始からまもなく1年。光明は見えてこない。

虐殺会議から3年後、ソ連アウシュビッツ強制収容所を解放したのは45年のきょう1月27日だった。80年近くを経て、今度は侵略側に回ったロシアにドイツの戦車が対峙しようとしている。人類が前進できない生き物だとは思わない。でも、戦争は繰り返すまいというシンプルな覚悟すら貫けないのは一体なぜなのか。