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・日銀新総裁に経済学者の植田和男さんが就任する。

・早くも緩和策修正の金利先高を見越し、銀行株が買われているとか。

・出口戦略は終戦後のインフレ退治なみの難路かもしれぬ。好循環へのベクトルは描けるか。

 

東京大学理学部数学科卒。きのう、新たな日本銀行の総裁として、政府から国会に人事案が示された植田和男さんの経歴の一端だ。だが、同科の教授だった小平邦彦さんから「数学をしっかりやるには、24時間数学のことを考えねば」と言われ、経済学に転身したという。

「机上の計算に終始する数学の世界は向いていないという思いが強まった」と本紙で若き日を述懐している。初の経済学者の出身として正式に就任すれば、さまざまな参加者の思惑や期待で休みなく動く市場が相手になろう。文字通り24時間、その動向をウォッチして対話を重ねつつ、次に打つ手を探りだしていかねばならない。

ご本人は先日「現在の日銀の政策は適切だ。金融緩和の継続は必要」と述べたようだが、早くも緩和策修正による金利の先高を見越して、銀行株が買われているとか。外国為替市場の関係者を対象にした調査でも過半数が、修正の時期を「4〜6月」と応じた。就任前から、変数や条件だらけの方程式の予習が待ち受ける。

「社会の存続基盤を危うくするうえで通貨を堕落させること以上に確実な手段はない」。41年前、日銀創立百年の折、前川総裁は講演でケインズの言葉を引いた。戦中の政府への膨大な信用供与への反省である。現状からの出口戦略は、終戦後のインフレ退治なみの難路かもしれぬ。好循環へのベクトルは描けるだろうか。