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・渋谷のワタリウム美術館山田寅次郎にまつわるチャリティー寄席が開かれた。

山田寅次郎は1890年に起きたオスマン帝国の軍艦エルトゥールル号が和歌山沖で海難事故に遭った際、寄付金集めに奔走した実業家だ。

ワタリウム美術館の渡多利月子さんは山田寅次郎の孫なのだ。トルコ・シリアの大地震の犠牲者は4万人を超えた。「祖父の思いを継ぎ、私たちの祈りを届けたい」と語る。家族に歴史あり、である。

 

東京都渋谷区にある「ワタリウム美術館」をご存じだろうか。内外の現代アート作品を展示する私設美術館だ。今週の月曜、13日にこの場所でチャリティー寄席が開かれた。トルコ南部で開かれた大地震義援金を集めるために。浄財は在日トルコ大使館に届けられた。

企画したのは、同美術館の渡多利月子さん。先日、当欄で山田寅次郎という実業家を紹介した。1890年に和歌山沖で起きたオスマン帝国(現トルコ)の軍艦エルトゥールル号海難事故の犠牲者を悼み、義援金集めに奔走した快男児である。渡多利さんは寅次郎の孫なのだ。13日は、くしくも彼の没後66年の命日だった。

上方落語の人気者、三代目桂春蝶さんが人肌脱いだ。披露してくれた演目は、創作落語「約束の海 エルトゥールル号物語」だ。地元住民の献身的な救助、看護活動など、史実を踏まえた笑いあり、涙ありの人情噺をたっぷり聞かせてくれた。ハンカチで目頭を押さえる人も。明治の歴史ドラマの余韻に浸っていた。

寅次郎の伝記によると、彼は日本におけるチャリティーの先駆者だ。トルコへの寄付金を募るため、東京で落語や講談、奇術などの演芸会を開催したという。今回の地震の犠牲者は隣国シリアを含め4万人を超えた。「祖父の思いを継ぎ、私たちの祈りを届けたい」。孫娘は会場であいさつした。家族に歴史あり、である。