4/14 人工知能と職業、言葉

先週発売された「三省堂国語辞典から消えたことば辞典」が面白い。コギャル、メーンエベント、MD(ミニディスク)。まぶたに昭和や平成がよみがえる項目が並ぶ。1960年代「IBM」は、コンピューター一般を指した。言葉は世につれ、である。

辞書の改訂は仕事の移り変わりも映し出す。例えば、かつて花形といわれたキーパンチャー。60年発行の初版の語釈は「統計機械などで使うカードに、穴を開ける係り」だった。2014年の第7版では「昔の大型コンピューターで、キーをたたいて情報を入力する仕事をした人」に。22年の最新版で項目自体が姿を消した。

これまでになく高度な人工知能(AI)の話題が世界で沸騰中だ。大量のデータをのみ込んで吐き出す自然な受け答えに、人間の仕事が奪われるという危惧も急速に高まる。海外の分析によれば、影響が及ぶのは数億人規模に上る可能性がある。弁護士や編集者、プログラマーといった専門職も無関係ではいられないという。

辞典から消える職業が増えてしまうのか。繰り返し言われるように、クリエーティブな領域に注力していくのが人の活路なのだろう。そういえば、三省堂国語辞典では「企業戦士」が消えたのに「社畜」が登場した。非効率な自己犠牲と服従を強いる風土は、なぜたかしぶとい。それこそAIが一掃してくれたらいいのに。