4/24 積ん読の意義

読書には3種類ある。朗読、黙読、積置だ。江戸時代、すでにそんな分類法があったという。明治に入って、「置」の代わりに「読」の字を当てた「積読」の表記が現れる。未読の書を抱え込む積ん読の歴史は古い。東京都立中央図書館の公式サイトで知った。

同図書館が現在「みんなの積ん読展」というユニークな催しを開いている。いつかは読みたいのにまだ読めていない。そうした本を広く募り、ランキングと一部の現物を展示する。名作だが長い海外作品に混じり、当代の日本人人気作家の小説も。図書館員だけの投票結果もあり、プロでも積ん読があることにほっとする。

社会学者の上野千鶴子さんは本紙の随筆で新型コロナによる外出自粛は積ん読だった古典を読む機会になったと記していた。一見無駄に見える積ん読だが、脳科学者の茂木健一郎さんは、いつか読もうと本の存在を意識しながら過ごすだけでもプラスになると説く。在宅時間がのび「いつか」をかなえた人は多そうだ。

出版物の市場規模(紙と電子の合計)は2022年、4年ぶりにわずかだが減少に転じた。外出着やレジャーへの支出が回復するのと入れ替わるように、本や映像配信、家電などの「おうち消費」の苦戦や鈍化が報じられている。気になる本があれば、積ん読になっても買っておこう。著者と自分自身、両方への投資になる。