4/26 現代の御一新

島崎藤村の「夜明け前」には「御一新」なる言葉がしきりに登場する。幕末から明治にかけての変革を、当時の人々はこう呼んだのだ。それをのちに新政府が、中国古典由来の「維新」に置き換えた。この大河小説でも終盤には「維新」の語が目立つようになる。

さっそうとしたイメージの漂う表現だからだろう。昭和・平成の世にも「〇〇維新」は人心をつかんできた。近年では、その名は日本維新の会が独占した格好だ。大阪からじわじわ全国へ浸透し、こんどの統一地方選でも一人勝ちの様相である。東京都内の11市区の議員選では維新候補がトップ当選を果たした。

政権与党にあいそをつかし、リベラルや左派にもくみしたくない有権者が「改革保守」路線を選んでいるようだ。そこに宿るのは維新革命への大いなる夢か、もっと身近な地方政治や行政の「御一新」をたのむ気分か。いずれにしても、組織や団体が世の中を支配する閉塞感への反発がこのブームを支えているに違いない。

次の衆院選で、維新は全国すべての選挙区に候補者をたてる構えだという。公明党との対決も辞さぬそうだ。攻勢にがぜん注目は集まるが、この政党がいったい何を目指すのかも改めて問われるところだろう。蛇足ながら「夜明け前」の結末は苦い。「御一新」の到来に心躍らせた明治人の、無念にじむ物語である。