4/30 自転車の楽しさ

うさこちゃんは自転車に憧れている。花が咲く野原を通り、きつい坂道をのぼり、おばさんの家でクッキーを食べる自分を想像する。「はやく おおきくなりたいな だって、じてんしゃに のるのは たのしいもの」(「うさこちゃんとじてんしゃ」 松岡享子訳)

ミッフィー」の愛称で知られるうさこちゃんの生みの親、ディック・ブルーナさんも自転車を好んだ。愛車とは40年以上のつきあい。毎朝ペダルをこいで仕事場に向かい、道すがら作品のアイデアを練ったそうだ。自分の力で前に進む。世界が一気に広がる。自身が慈しんだ大切な感覚を絵本の中に投影したのだろうか。

子どもの自転車死傷事故が6月に増える、という記事を読んで暗い気持ちになった。新学期がスタートして2ヶ月ほど。中高校生は通学路の風景が日常になり、小学生であれば仲良くなった友達とちょっとした遠乗りに挑む時期かもしれない。事故に遭った子らも楽しいひとときを過ごしていたはず、と考えると切ない。

きのうから大型連休が始まった。休みの間に「特訓」をする親子もいるだろう。ハンドル操作だけでなく、安全に乗り続ける知恵も、ぜひ。ブルーナさんは「子どもの涙を見るのは辛いことです。想像しただけで胸が締め付けられます」と語っていた。だから物語は常にハッピーエンド。決して悲しい結末は描かなかった。