5/1 メーデーに祝うべきは

京都駅、平日朝8時の新幹線上りホーム。スーツ姿の人々が列車が到着するまでの短い時を共有していた。ふと耳のアンテナが一組の会話にチューニングされた。「…やねん」「わかる?」。会社の先輩らしき男性が初々しい様子の女性に語りかけている。

こうば(工場)という単語が聞き取れた。中小企業の社長さんが新入社員を連れて出張に行くのだろうか。「ありがとう、という言葉をいっぱいもらえる。そんな会社にしたいんよ」。男性は仕事に誇りを持っているようで、その思いを懸命に伝えようとする。女性は背筋をぴんと伸ばし相手の目を見て何度もうなずいた。

ともに働くものどうしに通う敬意と信頼を感じて清々しさに朝から気が晴れた。今日5月1日はメーデー。労働者の祭典として、休日とする国は多い。欧州では古くから夏の訪れを祝う日でもあるという。「ロボット」という言葉を世に送り出したチェコの作家、カレル・チャペックに「労働の日」と題したエッセーがある。

愛する庭仕事に託してこう綴る。「もしきみが何かを祝おうとするなら、きみのこの労働を祝うべきではない」。その手で育てたこの草花をこそ祝え、と。単に労働したことより「労働によって結ばれた果実を誇るべきだ」(「園芸家12ヶ月」小松太郎訳)。誰かが敷いた1本の道、自分で整えた食卓の肴を今日は祝おう。