5/25 持続可能な株高

「これから株式相場が上がるらしいんだ」。ちょうど20年前の今ごろ、ある金融機関のトップにそう言われた。根拠をたずねると、「占師に聞いた」という。「え?」。クエスチョンマークが頭に浮かんだが、嬉しそうな表情を前に突っ込む気になれなかった。

長引く株価の低迷で、日本経済は体力をすり減らしていた。株安で財務を脅かされた経営者は、ぎりぎりの緊張状態のなかにあった。占いで会社の方針を決めるのならともかく、明るい見通しに励まされる心情は分からなくもなかった。そして予言は的中。日経平均は1万円台を回復し、その金融機関は体力を取り戻した。

足元で3万円台の株価が続いている。昨日は利益を確定するための売りで下げたが、大台を割り込みはしなかった。企業収益への期待が押し上げた。中国に代わる投資先として注目されている。著名な米投資家の言葉が効いた。背景は様々に言われるが、関係者の願いは一つだろう。つかの間の株高で終わってほしくない。

中国古代の占いの書で、儒教の経典でもある「易経」に「窮まれば変じ、変ずれば通じ、通ずれば久し」という言葉がある。行き着くところまで行けば新たな展望が開け、それが長く続く。では「失われた30年」と呼ばれるときを経て、日本経済は持続可能な何かをつかむことができただろうか。いまそれが試されている。