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動物界の主役交代が迫ってきた。ウシが迫ってトラきたる。干支が気になるのは、年越しを挟んだこの時期くらいだろうか。証券業界の格言では「丑つまずき」という。言葉のとおり、今年の株式市場はパッとしなかった。もちろん、ウシが悪いわけではまったくない。

この動物にとって、2021年は受難の年だったかもしれない。温暖化対策を話し合う国際会議(COP26)では、げっぷがやり玉にあがった。温暖化ガスの一種、メタンが含まれるからだという。そこで「脱ウシ」。ウシにしてみれば「人間に尽くしてきたのに…」と、愚痴のひとつもこぼしたくなるところだろうか。

ここにきて浮上してきたのが牛乳の供給過剰問題である。冬休みで給食がない時期にコロナ禍による消費減少が追い打ちをかけた。生産者団体などでつくるJミルクはきのう、「1日1リットル飲もう」と酪農関係者に呼びかけ始めた。「一滴も無駄にしないためにできることを」。公開した動画で、幹部が切々と訴えている。

古来ウシは堅実さや粘り強さの象徴とされてきた。「ウシの歩みも千里」のことわざもある。気候変動も、変異を重ねるウイルスも、一歩ずつ乗り越えて進むしかない。そう諭してくれる存在にも思える。「牛の眼のひかりの先の冬木の芽」(鈴木牛後)。希望の芽を探しつつ、「1年間おつかれさま」とねぎらってあげたい。