1/15 受験生が紡ぐ大河

「受験生大河のごとく来たりけり」(仙田洋子)。今年もこの日が巡ってきた。大学共通テストの本試験が今日から2日間の日程で行われる。少子化で大河の流れは細っている。とはいえ、50万人規模の若者が挑む。けさの試験会場周辺は、冒頭句の景色だろう。

いまでも試験の夢を見るという、かつての受験生もおられよう。遠い日の緊張感を思えば、大河を形成する一人ひとりの努力や夢を応援したくなる。昨年の共通テストの公民の問題を眺めると、裁判員制度特定秘密保護法といった言葉が並んでいるではないか。親の世代は、つい、昨日の出来事のように感じてしまう。

湾岸戦争の対応に苦しんだ海部俊樹内閣にかわる宮沢喜一内閣のもとでは、1992年に佐川急便事件、翌年にはゼネコン汚職事件が明るみに出て…」とは、最近の高校の日本史の教科書の記述だ。水玉模様のネクタイがトレードマークの海部さんも91歳で鬼籍に入った。平成の日々は、歴史の遠景に退きつつある。

2年続いてコロナ禍の大学入試である。変異型の「オミクロン型」の感染者が急速に拡大している。歳時記を繰れば、入試の句には子を案ずる親の心情を描くものが多い。「受験子を風邪よりかばふほか知らず」(平松弥栄子)。とにかく無事で…。きょう試験に挑む若者にも、やがてその思いを知る日が巡り来るだろう。