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鉄道紀行の名作「時刻表2万キロ」に、兵庫県加古川線が登場する。著者の宮脇俊三国鉄全線の「完乗」をめざして旅を続け、このローカル線には1975年の大みそかに初めて足を踏み入れた。「地味ではあるが、人口密度の濃い地域なので接続も概してよい」

そんな路線とあって後年の民営化でも生き残ったのに、昨今は赤字続きだ。先月、JR西日本が公表した採算性の低い30の区間には同線の谷川-西脇市の約17キロメートルが含まれ、地元では存続を危ぶむ声が強まっているという。リストにはほかにも大都市に近い線区が名を連ね、少子高齢化時代の地方鉄道の多難ぶりがわかる。

JR西の動きを受けて、先週は全国28道府県の知事が国への緊急提言をまとめた。不採算区間だけを切り離して扱うな、国もきちんと支援を、と鉄道ネットワークの維持を求める訴えは切実だ。とはいえ、現実に乗客はどんどん減り、便数が減り、それでまた乗客が減る。そういう悪循環を断つ手段を誰も持ち合わせない。

近いうちに、JR東日本もローカル線の収支を公表するという。現実直視は活発な議論の前提だが、数字の取り扱いは慎重に願いたいものだ。ちなみに、かの宮脇は加古川線に3本あった支線にも乗った。のちに第三セクター路線やバスに転換した路線。三セクに転換するも廃止された路線。それぞれに厳しい境遇である。