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五月病という現代の病は1968年ごろから日本社会に広まった。新入社員や大学1年生が新しい環境になじめず、だるい、つらいといった心身の不調を訴える。今年はその様相が例年とは少し違うとラジオで紹介していた。コロナの影響がこんなところにも、と思う話だ。

この春、感染が落ちついたのを見計らってリアルで仕事や授業を始めたところ「対面疲れ」を起こしている若者が相当数いるという。なかには2年間ずっと講義を2倍速で聞いていたため「生で先生の話を聞くとゆっくりすぎてイライラする」との学生の声もあり、思わず笑ってしまった。と同時に、うーんと考えこんだ。

動画配信の普及で倍速視聴なる映画の消費法も、Z世代を中心に広がる。最近の若者は忙しい。かけた時間に対する満足度を表す、コスパならぬ「タイパ」が大切らしい。1本でも多くみようと早送りする映画好きはVHS時代からいたが、今は目的が違うと「映画を早送りで観る人たち」の著者、稲田豊史氏は考察する。

一種の「生存戦略」だというのだ。溢れるコンテンツ、知らないことで周りから取り残される恐怖。個性的でなければ、との強迫観念に駆られ、過食症のごとく情報の「カロリー摂取」に走る。疲れるのも無理はない。効率一辺倒で無駄を悪しとする社会に一体誰がしたのか。橘月の空気を吸い胸に手を当ててみる。