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月へ、そして火星へ。壁にぶつかりつつ宇宙への旅が再始動しようとしている。アポロ11号の月面着陸の数年前、4時間余りで地球を3周し帰る宇宙船があった。乗るのは工学を学んだ軍人だが、詩人の魂を持つ男といわれていた。窓から見る光景の美しさに心を奪われ大気圏突入の操作が遅れる。予定より400キロ離れた場所に無事着水したが、関係者は大いに心配したという。常に冷静に観察し理屈で説明する科学は、自然の美しさを台無しにすると非難されがちだ。しかし、科学者の村山斉さんは科学者は違いよりも共通点に美を感じるだけだと説く。月面のデコボコを見て地球と同じ物理法則が成り立ちそうだと喜ぶのだそうだ。今回の再始動が世界の美しさ、諍いの愚かしさに皆が気づき、違いを乗り越える契機になればいい。(335文字)