12/19 ウクライナの冬

「十二月になると一日一日に時を刻む音が聞こえるようである」(山本周五郎「年の瀬の音」)。残すところ10日余、せかされるように年が暮れようとしている。冬本番らしく強烈な寒波がやってきた。積雪がさらに増すところもありそうだ。運転や除雪には十分注意したい。

エアコンのスイッチに伸ばしかけた手に、一瞬のちゅうちょが絡みつく。このところの光熱費の高さは近年記憶にない。このまま暖房を入れるか。いいや、1枚重ね着すればギリギリしのげるかも。そんな瀬踏みが当たり前になってきた。もっとも電気そのものが失われた街々のことを思えば、ささいな悩みというべきか。

ウクライナの冬はどんよりとした天気が続くという。キーウでは最高気温が0度前後、大きくマイナスに落ち込む日も珍しくない。ロシアがエネルギーインフラを狙い撃ち、多くの人が暖を取れていないと伝わる。ひきょうな攻撃をどこまで続ければ気が済むのか。この一年、数えきれないほど湧いた怒りに改めて震える。

ベートーベンの誕生日ともいわれる17日夜、東京都武蔵野市「第九」のコンサートが開かれた。収益はすべてウクライナ支援に回るという。会場はほぼ満席で、募金箱には幾重にも行列ができていた。あちこちで同じ旋律と声援が響いているのではと想像する。酷寒を脱し再び平和の歓喜が訪れるまで、希望を捨てまい。