12/22 雪国の辛苦

1944年から翌年にかけて、新潟県内は記録的な大雪に見舞われた。雪氷研究者でエッセイストの高橋喜平さんは、同県十日町市に赴任したばかりだった。日本有数の豪雪地帯である。この時に身の回りで見聞きした経験を、「豪雪記」と題した随筆に書き残している。

12月中旬からやむことがなく、やがて物置小屋の柱や樹木が次々と折れる。家並みが埋まり近所でさえ迷子になった。雪道を歩いていて2階だての屋根の上に落ちてけがをした、等々。「一降り一千両」なる言葉も生まれた。「この豪雪は家をつぶすか、身代をつぶすか」と嘆息する人がいたとある。

冬日和の東京にいると実感しにくいが、北からのニュースでその辛苦の一端を知った。広い範囲で停電が続き、ピクリとも動かない車列が延々と続く。除雪作業中の死傷事故もあった。国道の渋滞や立ち往生はきのうのうちに解消されたものの、この週末はふたたび日本海側で寒波が予想される。冬本番はこれからだ。

地球温暖化が進むと、雪害が深刻になるという分析がある。海面水温の上昇で、大量の降雪をもたらす爆弾低気圧が発達しやすくなるそうだ。雪を「本来は人類の味方」とした高橋さんは一方で、「いまだ無限の秘密と危険を蔵している」と警鐘を鳴らした。我々は自ら強敵を育てているのではないか。不安が積もっていく。