2/19

「楽しい」「すげえ」「ちょっと怖い」「頑張れっ」。子どもらの声が体育室に響く。先日、東京都府中市の若松小学校で電動車いすの体験授業を見学した。未来のまちづくりを考えるのが目的だという。右手でレバーを操作し、床に立てたポールを回って戻る。

使った機材は「WHILL(ウィル)」という。タイヤと駆動部の工夫で小さな段差は乗り越えられ、ほぼその場で回転もできる先端的な製品だ。構造から値段まで、会場の社員に質問が飛ぶ。街で車いすユーザーを見かけたら、他人事ではなく、自分のこととして気にかけてくれるのでは。大人たちにはそんな期待がある。

日産自動車の元社員らによるベンチャー企業が開発した。障害者だけでなく、お年寄りなども広く使える近距離モビリティ(移動手段)との位置づけだそうだ。免許返納者の購入も多く、自動車販売店の取扱いが増えた。マイカーや自転車はつらい。足腰も弱った。でも自由に移動したいという人の助けになっている。

日本以外でも20を超す国・地域へと利用が広がる。リニア新幹線、空飛ぶタクシー、高速自動運転、電動キックボードなど、モビリティの姿が大きく変わりつつある。より速く、より遠くを目指すものが耳目を集めがちだが、ハイテク車いすのような方向も思いやりやきめ細かさの点で日本らしい戦い方と感じる。