3/16 72年ぶりの議員除名

平安時代、都の治安を担う検非違使に任命された役人が数か月たってもいっこうに出仕してこない。摂政の藤原道長が使いを出して問責したところ、欠勤の理由は「日の吉凶がよろしくなかったので・・・」だったそうだ。「平安京の下級官人」(倉本一宏著)にあった。

同書によれば、役人がサボるのは珍しくなかったそうだ。天皇の沐浴や食膳の担当者が懈怠したとして、一条天皇に呼びつけられたという逸話も残る。かなり神経が太い。欠勤をとがめられようが、始末書を書いて謹慎していれば赦免されたというから、当人たちは「たいしたことはない」とたかをくくっていたのかもしれない。

昨年7月の当選以来、一度も国会に登院していない参院議員が除名された。72年ぶりだという。本人は「民意を無視している」と反発する。でも一票を投じた28万人余りのどれほどが、いまの彼の振る舞いを支持しているのだろう。不当逮捕の恐れがあるとの主張も、1000年前の役人の言い訳とそう変わらぬ気がする。

一度受け入れると表明した陳謝をドタキャン。登院停止は意味がないのでクビにする。国権の最高機関が振り回される光景にはいささか滑稽さが漂う。とはいえ重いバッジを奪う大事ゆえ、深刻に受け止めねば。議員の働き方や報酬はどうあるべきか、じっくりと考える必要がありそうだ。議場の中でも外でも。