5/4 教員の大型連休

その家に住みついた猫は、飼い主を冷静に観察する。「人間と生れたら教師となるに限る。こんなに寝ていて務まるものなら猫にでも出来ぬことはないと」。夏目漱石出世作「我が輩は猫である」のよく知られた一節である。苦沙味先生は、旧制中学の英語教師なのだ。

批評精神に富む猫さんは、この教師を「太平の逸民」と呼ぶ。裏表のない気質は美点だが、とにかくお気楽、という意味だろう。勤勉のように見せかけて実は昼寝ばかりしている。読みかけの本に、よだれをたらす始末だ。学者の友人や、かつての教え子たちと滑稽な座談に興じる日々だ。よほど暇なのか。今は昔の物語だ。

風薫る大型連休である。現代の公立学校の教師たちは、きちんと休めているだろうか。文部科学省の官製交流サイト「#教師のバトン」をのぞくと…。去年の今ごろ、切実なツイートがあった。「連休に出かけたことなんてほとんどありません。部活の試合があるからです」「新採用教員が辞めてしまいました」

文科省が公表した昨年度の教員の勤務実態調査によれば、平日1日の勤務時間は前回調査に比べ30分ほど短くなった。が、残業代が出ない長時間労働は続く。多忙で昼寝どころではない。猫の手も借りたい気分だ。連休明け、先生たちはどんな近況報告をするのだろう。役所の皆さんは、確認したほうがいい。