3/27 ボイジャーのディスク

日に日に朝の訪れが早まっている。東京の今日の日の出の時刻は午前5時35分、大阪は同じく53分。いずれも先月の節分のころより、1時間以上も早い。天体の図鑑のさし絵を頼りにイメージすると、地軸の傾いた地球が太陽の周りを動いていったということだろう。

天文年鑑」によると28日と29日は、夜明け前の東の空に金星と火星、土星の三角形ができ、そばを細い月が昇るようすが見られるそうだ。宇宙の広大な画布は、時に美しい構図で私たちを魅了する。この神秘の闇を進み、数々の惑星の写真を地球に届けたのが、1977年に打ち上げられた2機の探査機、ボイジャーだった。

今は太陽系を離れたこの機には地球の自然の音や人間の映像が入ったディスクが積まれている。バッハ、チャック・ベリーの曲のほか、55カ国の言語によるあいさつも収録された。むろんロシア語、ウクライナ語もある。罵りの言葉や砲声、爆音は聞こえず、もし知的生命体が再生したなら、地球は平和の星と感激するだろう。

77年は米ソ冷戦で核開発の競争が激化していたころ。探査プロジェクトの担当者は、ディスクを「文明の痕跡を示すタイムカプセル」と位置づけたようだ。その危機感は色あせるどころか、残念ながら、また高まりつつあるのかもしれない。「別のディスクを打ち上げよう」。そんな日が訪れないことを、星に祈りたい。