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あの喧騒から間もなく1年がたつ。競技場の内側より、ある意味話題の多かった五輪の舞台裏を知りたくて、公式記録映画「東京2020オリンピック SIDE:B」を見に行った。もっとも印象に残ったのは、狂言師野村萬斎が率いる演出チーム解散のシーンだ。

降板を決めた萬斎と、後を継ぐことになった広告会社出身の統括者とが、ともに働いた歳月を振り返り、いかに分かりあえなかったかを不快感もあらわに語っていた。かたや伝統と文化の上に表現の礎を置こうとし、かたや商業性を重んじた。今に始まったことではないが、両者の間に横たわる深い溝を見た気がした。

どちらが正しくてどちらが間違っているという話ではない。五輪というあまりに巨大な祭典は、いったん生み落とされると誰ひとり制御できない魔物に化ける。会期という命をまっとうするまで進み続ける。国のトップにも国際オリンピック委員会IOC)会長ですら止めることなどできはしなかった。

等々、発見がいくつもある映画なのである。作品への評価は賛否両論あると聞く。が、五輪の魔性を記録し得た一点で、監督は自らの仕事を成し遂げたと言える。そしてもう一つ。もし舞台裏の一片にでも、当時触れることが出来ていたなら、コロナ下の五輪をめぐる社会の分断は小さくすんだのではないか。そう思った。