11/29 日本サッカーの40年

東京・葛飾の京成線四ツ木駅は、構内がキャプテン翼一色だ。作者の高橋陽一さんが地元の出身で、翼くんの等身大フィギュアが乗降客を出迎える。すぐそばを流れる荒川の河川敷のグラウンドでは先の週末も、青空とススキを背に子供たちがボールを追いかけていた。

連載開始は1981年、海外のトップ選手にも愛読者が多い。もっとも当時の日本サッカーにとって、世界は遠かった。「それにしても、日本はいつになったら、ワールドカップに出られるのか。やっぱり、翼にがんばってもらうしかないかな」。高橋さんは初期のコミックスの端書きに、やるせない思いを吐露している。

40年を経て、日本はW杯常連国になった。出場が当然になれば期待の視線は上を向く。マンガもそれを映し出す。昨年の講談社漫画賞を受けた「ブルーロック」は、主題がW杯優勝だ。世界一のストライカーをどう生み出すかを描く。「己のゴールの瞬間のためだけに生きろ」。そんなあおり文句に、主人公たちは奮い立つ。

ドイツ戦の歴史的勝利の勢いで一気に。期待の熱狂の中迎えたコスタリカ戦は、ギアがかみ合わなかった。一足飛びにいかないのもまたW杯なのだろう。切り替えていけばいい。マンガは現実を先取りした夢を描く。ほろ苦い現実を幾度も乗り越え、翼くんとの距離を一歩ずつ詰めてきた日本サッカーの40年でもある。