2/23 悪夢のシナリオ

北朝鮮日本海に向けて執拗にミサイルを撃ち続けている。プーチンは新STARTの参加停止を表明し、核軍拡の可能性までほのめかした。

・権力者たちは独善の正義を振りかざし人の命を脅かす。悪夢のシナリオをどう防ぐか。世界に重い課題がのしかかっている。

#北朝鮮 ミサイル

#プーチン

 

各国の言い伝えには、ときにこの世の終わりのイメージを生々しく喚起させるものがある。早大津田左右吉らに師事した民俗学者の孫晋泰はふるさとの朝鮮半島を訪ね民話を収集し、1930年に日本で出版した。その中に「世界の滅亡時代」と題した一編がある。

ついに滅亡のときが訪れると、真っ赤な大きな太陽が空に現れる。天と地がくっつき、巨大な石臼のようになって回転する。地上に住むあらゆる生き物たちが、これにより滅亡してしまう。こんなすさまじい破壊の光景を、現実のものにしたいのだろうか。北朝鮮日本海に向けて、弾道ミサイルを執拗に撃ち続けている。

「太平洋を射撃場として活用する」。そううそぶく北の支配者たちが後ろ盾と頼むロシアもまた、核を背景にした脅しをやめようとしない。プーチン大統領はモスクワの演説で新戦力兵器削減条約(新START)への参加を停止すると表明した。侵攻をあらためて正当化し、核軍拡の可能性までほのめかした。

朝鮮の民話には、善人だけは石臼の中に入って生き残り、子孫を増やすという別のオチもある。だが破滅の先の再生がかすかな希望になり得るのは、言い伝えの中だけの話だ。そして権力者たちは往々にして、独善の正義を振りかざして人の命を脅かす。悪夢のシナリオをどう防ぐか。重い課題が世界にのしかかっている。