2/27 花見の思い出

#河津桜 花見

#多摩川 花見

 

公家社会の粋と教養を愛した兼好法師は、無粋な人に対していささか辛辣だった。徒然草の中で、以下のような行動を困ったものとして挙げている。泉があれば手をつっこむ。雪があれば足跡を残す。そして花の下で酒を飲み連歌を作り、枝を折って持ち帰る。

今年も桜の季節がやってきた。早咲きの河津桜は方々に花をつけ、川沿いに850本が並ぶ静岡県河津町は先週末見ごろを迎えた。繰り出した客で道は混雑し、一部では携帯電話がつながりにくくなったそうだ。3月から4月、各地の花の名所ではスマホを掲げる人々で混み合いそうだ。お酒や歌も復活するのだろうか。

人々が飽きもせず花見を繰り返すのはなぜだろう。多摩六都科学館西東京市)の高柳雄一館長が、公式サイトのブログにこんな考察を記している。昔の友人と数時間、花を見ながら川沿いを歩いた。話題はそれぞれの花見の思い出だ。花は同じでも仲間の顔は年々変わり、すべての花見は一度限りの体験だったと気づく。

川崎市の一角、多摩川の土手に60本を超す桜が並ぶ。最上流の5本が河津桜で今が旬。今後は淡墨桜、紅華など十数種類の桜が時期をずらし満開を迎える。長く花を楽しめるよう市民団体が募金で植えたと解説にある。名所ではないから混雑もなく、家族連れがゆっくり楽しむ。思い出を育める場所は人混みだけではない。